奥付とは?自費出版でも必要?書き方や注意点も詳しく解説

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奥付とは?自費出版でも必要?書き方や注意点も詳しく解説

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奥付は、商業出版されている本にのみついているイメージがありますね。しかし、自費出版の本や同人誌であっても、その本を販売する予定があるならば、必ずつけなくてはなりません

自費出版した本を、書店などに流通させずに、友人や家族に贈るだけの予定ならば奥付は不要です。

奥付は、「このように書かなくてはならない」という絶対的なルールはありません。デザイン性豊かな奥書にするのも自由です。

ただし、最低限記載しなくてはならない事柄はあります。書き方や注意点をしっかりと確認しておきましょう。

※奥付以外の出版専門用語の意味を調べたい場合は、こちらのリストをご覧ください。
自費出版でよく使われる出版用語を覚えておこう【出版専門用語リスト】

「奥付」とは?

奥付とは、書籍の本文が終わった後や巻末に設けられる書誌情報を記載した以下のようなページのことです。紙の書籍だけでなく、電子書籍にも奥付は存在します。

画像出典:人間失格 (角川文庫) Kindle版

奥付とは、その本の責任の所在を示すためにあります

本を出版する際には、不備がないように何度も確認をするものです。しかし、それでも、本の内容に不備が発生したり著作権上の問題が発生したりすることもあります。また、内容には問題はなくとも、本そのものに乱丁落丁といった製本上の欠陥が発生することもあるでしょう。

このような問題が発生したときに、読者が問い合わせをできるように、奥付はつけられるのです。

奥付とは、著者がこの本に責任を持っていることを示すものでもあるわけです。ですので、もしも奥付がなければ、「作者が責任逃れをしようとしている」と見なされてしまいます。

そのため、奥付のない本は書店流通できませんし、同人イベントでも重要通達事項に「責任の所在を明確にするため、必ず奥付を入れてください」とあります。

奥付はどんなときに必要になるの?

奥付は、その本を売りたいときに必要になります。書店流通を希望しない、あるいは、同人誌イベントなどで配布・販売する予定がないならば不要です。

問題が発生したときに、読者が問い合わせをできるようにするものですから、不特定多数の人の手にわたる場合にのみ必要になるのだと考えておきましょう。

なお、奥書には絶対にこのように記載しなくてはならないというルールはありません。奥書の書き方は、縦書き、横書きどちらでもOKです。自分の好みや、書籍の雰囲気などに合わせて選択するようにしましょう。

また、奥付はテキストのみで完成させている本が多いですが、オシャレな枠で囲うなどして、デザインのこだわりや個性を発揮するようにしてみてください。

奥付の内容

奥付に書かなくてはならない事項としては、以下のようなものがあります。

・本のタイトル
・発行年月日
・版および刷数
・著者名
・発行所名
・発行所住所
・発売元名
・発売元住所
・印刷所名
・ISBN(ある場合のみ)

これらの項目のうち、本のタイトルは最初に記載しなくてはなりません。しかし、その他の項目の記載順序は定められていません。

本のタイトル

本の正式タイトルです。サブタイトルやキャッチコピーは書かずに、正式なタイトルを明記しましょう。

なお、本のタイトルは奥付の最初に記載しなくてはなりません。目立つように大きめに記載するようにします

発行年月日

発行年月日を記載します。この際に、発行日は実際に印刷した日付を記すことはまれです。流通が滞る可能性もあるので、製本が完了し、出庫される日から2週間後くらいに設定することが多いです。

なお、ゲン担ぎの意味も込めて、搬入日付近の大安日や記念日を発行年月日にすることもあります。

版および刷数

版とは書籍を印刷する元になるバージョンのことです。最初の版を利用して印刷したならば、初版と記載します。

次に、刷は印刷回数のことです。初めに刷ったものの売れ行きが好調で、さらに刷ったならばそれは「第2刷」となります。

著者名

その本を作った作者の名前を記載します。同人誌の場合は、個人ではなくグループで本を出すことも多いでしょう。その場合は、グループ名を記載します。

なお、著者名は実名を記載する必要はなく、ペンネームでOKです。

発行所名

その本を発行した組織や出版社の名前を記載します。同人誌の場合は、サークルの名前を記載します。

発行所住所

問い合わせ先として、発行所の電話番号や住所を記載します。

発売元名

発売元名とは、全国の書店に本を置いてもらうために、取次との契約がある会社の名前を記載します。

発売元住所

発売元の電話番号や住所を記載します。

印刷所名

その本を印刷・製本した印刷所の名前を記載します。

奥付に記載してはならないこと・・・定価と住所

奥付は、その本の責任の所在を示すために絶対に必要な事柄です。しかし、奥付を作成する際には、記載しない方がよいものもあります。

それは、定価です。ほとんどの書籍は定価を奥付に書いていません。

本は、長期間販売することになる場合もあります。このとき、物価があがったり税の変動があったりすると、本の値段を見直さなくてはならないことも出てきてしまいます。

奥付に、本の定価を記載すると、容易に価格の変更ができなくなってしまいます。奥付に定価を書くのは避けましょう。

また、同人誌の場合、奥付に自宅の住所などの個人情報を記載しないようにしましょう

2000年以前の同人誌は、自宅の住所を奥付に記載していることも多かったのですが、個人情報が流出しトラブルに巻き込まれることも少なくありませんでした。昔の同人誌の慣習にしたがって、ついつい住所を書いてしまう人もいるようですが、トラブルを避けるためにも記載しないようにしてください。

また、自費出版で実際にあったトラブルと対応策はこちらをご覧ください。
意外と怖い自費出版? 実際にあったトラブルから対応策を考えよう

まとめ:自費出版した本を売りたいならば奥付をつけよう

奥付は、その本の責任の所在を示すためにあります。著作権侵害や落丁といった問題が発生したときに、読者が問い合わせをできるようにするものです。

ですから、自費出版した本を流通させたり、同人誌販売イベントで売ったりしたいならば、奥付は必要です。

奥付には、決まった様式はありませんが、書籍のタイトルや著者名などの絶対に記載しなくてはならない事項は存在します。読者がきちんと問い合わせができるように正しく記載しましょう。また、自宅住所や定価は書く必要がないので、記載しないようにしてください

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