自費出版で収入は得られない? それでも自費出版で損しない方法

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自費出版で収入は得られない? それでも自費出版で損しない方法

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近年は、Webサイトにブログ、電子書籍と、作品を発表するプラットフォームは増えています。そこで手応えを感じた方が、自費出版サービスを使って「作品を本にして売ってみようかな」と思うこともあるでしょう。しかし、本を売るということは思うよりはるかに大変なことなのです。自費出版で収入を得ることは可能なのでしょうか。

自費出版にはお金がかかる

商業出版は、出版社が費用を負担して出版します。著者に対しては原稿料や印税が支払われることはあっても、著者が制作費を負担することは基本的にありません。

一方、自費出版は、著者が費用を負担して個人で出版するものです。原稿を制作する時間・金銭コスト、デザインや編集などを委託する場合の費用、印刷・製本費用など、すべて自分で賄う必要があります。
その費用は決して安いものではありません。

デジタル技術が進歩した近年では、印刷費用を抑えることも可能にはなってきましたが、それでも、何十冊、何百冊という単位でそれなりの用紙で印刷しようと思えば、それなりに費用がかかるもの。サポートを受けるにしても自分で全部準備するとしても、目に見えない制作コストもあります。

「○円からの格安自費出版サービス」などとうたうサービスを目にすることもあるかもしれませんが、安いサービスには安い理由があります。
安いからという理由だけで選んでしまうと後々トラブルに発展する可能性もあるので注意が必要です。

実際にあった自費出版のトラブルや対応策をこちらの記事で詳しく解説していますので、これから自費出版をする予定がある方はぜひチェックしてみてください。
意外と怖い自費出版? 実際にあったトラブルから対応策を考えよう

一般的にどのくらいの費用がかかるのか

自費出版の費用は、本の媒体や仕様、発行部数、印刷の有無などによって大きく変動します。例えば、紙媒体/印刷有りの場合、下記のような費用が発生します。自動で見積もりができるサイトもあるので、シミュレーションしてみてはいかがでしょうか。

原稿製作費

既に自分で原稿を仕上げている場合、手書き原稿でない限り特に費用は発生しません。ただし、原稿をほかのライターに代筆/リライトしてもらう場合は別途費用が発生します。

また、専門の校正・校閲業者を入れるなどの場合は別途費用が発生します。そのほか、プロの編集者からのアドバイス、進行管理などは編集費としてカウントされます。

デザイン費

本の装丁デザイン、帯、表紙、本文デザインなど、視覚に訴えかける部分にかかるお金です。フォントやインクなどにこだわればこだわるほど費用は高くなります。

また、本文に使用する写真はカメラマンに、デザインはデザイナーに、イラストはイラストレーターに、と外注すると、それだけ依頼料(人件費)もかさみます。

DTP費

パソコンを使用して原稿をDTP化してデータを作成し、本として印刷できる形に整える費用です。個人で作成できるのなら自費出版本の製作費用削減につながりますが、よっぽどDTPに関する知識に長けている方でないと難しいでしょう。1ページあたり1,000円前後が相場です。

用紙・印刷費

使用する用紙によって大きく価格が変わります。特殊な用紙を使用する場合は比例して印刷費も高くなります。

また、部数が多くなればなるほど1冊あたりの印刷費は安くなります。ソフトカバー&四六版(通常サイズ)で5,000部を印刷する場合の用紙&印刷費は、およそ70~80万円と言われています。

なお、注文後1冊ずつ印刷するPOD(プリントオンデマンド)については、出版時点でのまとまった印刷費は必要ありません。

書店流通手数料

書店販売を希望する場合は、取次業者に書店流通手数料(販売業務委託料)を支払わなくてはなりません。最低でも10万円は必要で、一定期間書店で売れなかった本についてはそれとは別に出荷・返品手数料がかかることもあります。

自費出版で収入は得るのは難しい

「出版にお金がかかるのはわかっている。その分販売すれば大丈夫」と思った読者の方は、どうやってその本を売り、費用をまかなうだけの収入を得るか、現実的に考えていますか?

書店で販売することを考えているのであれば、出版社系の自費出版サービスに依頼することになるでしょう。その場合、売り上げをどのように配分するかはサービスや契約によりますが、著者が得られるのは定価の数%程度の印税のみであることも少なくありません。

例えば、定価が1,000円で、著者が得るのは1冊につき印税5%=50円だとします。

500冊出版して書店ですべて売れた場合、500冊✕50円=2万5,000円が著者の収入です。

制作費用がこの金額に収まっていなければ、赤字ということになります。 自費出版において、この金額で制作すること、販売することは現実的でしょうか。
個人で出版した本を1,000円で販売するのは簡単ではありません。あなたが書店に行って、知らない著者の本を1,000円で買うことを想像してみてください。

一方で、商業出版は、ビジネスとして利益の獲得を大きな目的の一つとしています。確実に利益を上げられると判断できるテーマを厳選して出版し、その採算も非常にシビアです。戦略を練り、販促施策を打ち出して、少しでも多く売り出そうとします。

それでも、出版不況といわれる状況になっているのです。個人の出版で収入を得るのはとても難しいということが想像できるでしょう。

印税とは?

印税とは、「著者が著作権使用料として出版社などから受ける金銭」のことを指します。これには、発行部数に応じて支払われるものと、売上数に応じて支払われるものがあります。

つまり、印税には2種類あり、前者を「発行印税」、後者を「売上印税」と呼びます。一般的に印税が発生するのは出版社が費用を負担して本をつくる「商業出版」の場合のみであり、著作を商品として使用する対価として出版社から著者に支払われるものです。なお、著者が受け取ることができる印税額は、本の販売価格×(発行部数or実売部数)×印税率で決定します。

自費出版においても本が売れたら著者に金銭が支払われますが、これは印税ではありません。厳密には、売上還付金(本の売上から経費を除いた分)と呼びます。そもそも、純粋な自費出版の場合は全額自費で出版している=著作権も含めてすべてが著者自身の所有物になり、著作が商品として使用されているわけではありません。出版社が出版を依頼したわけでもなく、当然費用を負担しているわけでもありません。そのため、売上還付金はすべて著者が受け取ることができます。契約にもよりますが、売上の50~70%程度は受け取ることができるようです。

・発行部数に応じて支払われるもの=「発行印税」
・売上数に応じて支払われるもの=「売上印税」
・印税発生は「商業出版」の場合のみ
・自費出版では「売上還付金」が支払われる

自費出版でも印税が入るケース・入らないケース

前述の通り、原則的に自費出版の場合は印税が発生しませんが、条件によっては発生するケースもあります。

まず、出版社が一般でも販売可能と判断し、著者の出版予定部数よりも部数を上乗せした場合です。この時、上乗せ分に印税が発生します。次に、増刷・重版が決まった時です。出版社がその費用を負担する場合は、増刷・重版分のみ印税の対象となります。

また、発行部数によっては印税が発生する設定を採用している出版サービス事業者も存在します。契約の際にしっかりと確認しておくようにしましょう。

自費出版で印税が入るときは注意が必要

自費出版で運良く印税が発生するケースになっても、黙っているだけで億万長者になるわけではありません。そこには、印税が発生する=レアケースならではのリスクもあります。

印税が入るからと言って儲かるわけではない

増刷や重版により印税が支払われることになったとしても、あくまでもそれは増刷や重版分に対する印税であり微々たる金額です。ある程度の印税を受け取るためには、増刷や重版後も継続して本が売れて、ベストセラーやミリオンセラーになることが条件であることを心しておきましょう。

「実売部数」ベースの印税はリスクが高い

一般的な印税は「発行部数」を基準として計算されますが、自費出版においては「実売部数」をベースとするケースも増えてきています。これが何を意味するかと言うと、実売部数が決定するまでには6ヶ月程度の時間がかかるため、印税を手にするのはそれ以降だと言うことです。しかも販売当初はどのくらいの部数が売れるのか先が読めないため、後々いくら支払われるのか見当もつきません。過剰に期待をしすぎて先に散財してしまうと痛い目に遭うこともあります。

自分がどれだけ納得できるか

とはいえ、自費出版が絶対に売れないかといえば、そうではありません。何かのきっかけでSNSなどで人気に火がつき、売れることもあります。書店以外で販売する方法もあります。1部でも多く手にとってもらうために著者ができることはたくさんあるでしょう。

そして、収入を得る方法は「本を売った売り上げ」以外にもあります。 自費出版をきっかけにして知名度や信頼が増え、本業の仕事依頼が増えることもあります。 出版によって作品のよさが認められ、ほかの媒体に寄稿を依頼されることもあります。 本を読んだ出版社の編集者が声をかけ、今度は商業出版で本を出すことができるかもしれません。

本を通して、自分がどういう人間であるか、どういうジャンルに造詣が深いか、どういう作品をつくることができるかをわかってもらえれば、次のキャリア、次の出版へとつなげるチャンスになるのです。そのチャンスが、収入を生みます。 つまり、出版物は「販売する本」だけではなく「自身の販促ツール」にもなり得るのです。

そのためには、次につなげるだけのクオリティに仕上げなければなりません。いかにも素人が作ったような表紙では手にとってもらえませんし、内容がよくなければ見てもらえません。印刷の質があまりよくなければ、いい気はしないでしょう。

何より、そうした一つひとつをきちんと作り込むことで、自分自身が満足する自費出版をやり遂げることができます。
そのことが必然的に信用を上げ、自身をPRする力を生みます。それだけのクオリティになれば、当初の「販売する」という点においても力をもつことでしょう。そういう意味でも、費用はある程度見ておかなければなりませんし、短期的な回収に拘泥しないスタンスが必要です。

まとめ:自費出版の価値は金銭ではなくブランディング

自費出版は、金銭目的でするにはリスクもコストも大きいと覚悟しなければなりません。

一方で、自分の思いを形にするという観点では、手が届かなかった出版を身近にするチャンスになります。

自費出版では、こだわりや予算に応じて思いのままに本を作り込むことができます。納得のいく本に仕立てることができれば、最後に本が納品されたときの達成感はとても大きなものになるでしょう。

そして、その出版が結果としてあなたの存在を知らしめれば、その先の展開は広がります。その意味で、販売を意識した質に仕上げることは大きな意味をもつのです。

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